13階段:高野和明
「13階段」は映画にもなった有名な小説です。サスペンス物ということで読んでみました。
主人公は過去に不慮の事故で相手を死に至らしめてしまった、三上という青年です。彼は刑務官の南郷に誘われて、死刑囚の冤罪を晴らすべく奔走する、というストーリーです。
死刑囚はほんとうに冤罪なのか、その証拠探しを進めていくうちに、疑わしい人が入れ代わり立ち代わり現れては消えていきます。
そして刻一刻と迫る死刑執行。
果たして本当に免罪事件なのか、真犯人は誰なのか、死刑執行までに間に合うのか?という内容です。
著者のあとがきで、ストーリーテリングに重要なのは、「どちらが勝っているか?」ということだ、という一文があります。
つまり、優勢であったものが一転して劣勢に追い込まれ、再び優勢になる…というシーソーゲームのような目まぐるしいストーリー展開こそが、エンターテイメントの神髄である、というものです。
言われてみればその通りで、最初から最後までうまくいっているだけの人の話(小説でも映画でも)は、気持ちよく読めるかもしれないけど、最初から想像ができているので、読後感ですっきりする、という感触がありません。
また、状況をよくしようと考えていろいろ行動しているにも関わらず、状況は全くよくならず、それでも最後の最後に大逆転がある、というのも面白い話にはよくある構成ですが、これも状況をよくしようと努力して、努力をし終えたときが「優勢」の状況、しかし、その努力の甲斐なく状況が悪化するのが「劣勢」ということなのでしょう。
本書はストーリーも面白く、読み始めると一気読みできてしまう類の本です。私は一度本を手にしても、それを開いて最初の1ページを読みだすまでに時間がかかることがあります。しかし、面白く、かつ読みやすい本は、一度ページを開いたら、読まずにはいられない魔力のようなものを持っています。
13階段もその類の本であることは間違いありません。
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