連続殺人鬼カエル男:中山七里
数年前に動画配信サイトの無料枠で「連続殺人鬼カエル男」というドラマが配信されていました。
そのときに興味がわいたものの、結局見ないでそのままにしてしまいました。
それからしばらくして、その原作が小説として存在することを知り、今度は本を手に取ってみました。
ある閑散としたマンションに、女性の死体がつるされており、そばにカエルの実験をして遊んでいるかのような文章が貼られている事件が発生、その後も同様にカエルをもてあそぶような文章とともに死体がみつかったことから、新聞が「カエル男」と命名し世間を恐怖に陥れる…という内容です。
事件の焦点となるのが刑法39条、「心神喪失者の行為は、罰しない」という条文です。
犯行はまさにその心神喪失者ではないかということで、警察、医者、過去に犯罪を犯した心神喪失者、一般人を巻き込んでストーリーが展開していきます。
途中、虐待を受ける子供のころの犯人の様子が、胸糞悪くなる描写とともに著されます。
虐待を受け続けたせいで人格が破綻してしまい、だから殺人を犯しても平気でいられるようになったのか、というストーリーであれば、では誰が悪かったのか、犯人は悪くないのか?という問いかけで終わるのかと思うところですが、そんなお決まりのパターンの話ではありませんでした。
絶望的なバイオレンスがあり、どんでん返しが何度もあり、そして著者が「最後の一行で驚かせる」と考えて書かれた最終行は、その前のページで言った刑事の一言が伏線になっています。
バイオレンス描写は読んでいるこちらが気持ち悪くなるような生々しいものですが、眠たいときに読んだら眠気が吹っ飛びます。
早い段階で犯人が判明するので、「おや、このあとどういう展開になっていくんだろう?」と思いながら読み進めると満足のいく読後感を味わえます。
この本、「連続殺人鬼カエル男ふたたび」という続編があるそうです。
前作ほどではないにせよ面白いという評判なので、機会があったら読んでみようと思います。
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