ブレイブ・ストーリー上中下:宮部みゆき
小学生低学年から中学年にかけての子どもに、本を読んでほしいと願う家庭で起こる問題の一つが、「かいけつゾロリから抜け出せない問題」だそうです。
いかにゾロリが偉大であるかの裏付けでもあるこの問題、本を自ら読んでほしいと願う親が、その解決策として見出したかいけつゾロリが、今度は足かせとなって立ちはだかるのです。
子どもが自分から読みたいという意思を持ってむさぼるように読むゾロリ。
その内容は絵本でもあり、漫画のようでもあり、というものです。ほぼ全ページにイラストが描かれ、そのイラスの間をぬうように文字が書かれています。オールフリガナ付きで、漢字が分からないという問題も起きません。
最初は喜んでいた親も、子供の学年が1年あがっていくたびに、そろそろ字だけの本に移ってもらえないか…と心配し始めます。
かくいう私も、本なんて読みたいものを読めばよいのでは、と思っていましたが、自分の子どもがどっぷりとゾロリにはまってしまい、Nextゾロリを自分からは探さない状況を見て、やはり気になってしまいます。
そこで自分のときを振り返ってどんな本だったら興味を示すかを考えてみましたが、一つは一文や一章が短く読みやすい本です。
また、ジャンルで言うならSF系やファンタジー系が好きだったと思います。
そこでファンタジー系で探しているうちにたどり着いたのがブレイブ・ストーリーです。
ブレイブ・ストーリーは宮部みゆきが書いているだけあって、しっかりとした構成ですが、なにせページ数が多く読破するには結構な時間を要すると思います。
私が読んだのは文庫本だったので上中下の3冊に分かれていました。すべて合わせるとざっと1500ページの大作になります。
さすがにゾロリの次にこれ、というのは無理があると思うので、最初はもっと分量が少なく一文が短いものを中心に読ませていき、そろそろいいかな?というときに渡してみました。
流石に文庫本を読んだことはなかったので、厳しいかなと思いましたが、上巻は読み終えたようでした。しかし、内容がわからず飛ばしながら読んでいるのかなと思って、内容について聞いてみたら、結構把握していたので、きちんと読んでいることも分かりました。
そして、宮部みゆきが書いたということもあって、興味があったので私も読んでみました。
読んでみて、改めて宮部みゆきの幅の広さに驚きました。
ブレイブ・ストーリーは、それまでのサスペンス物ではなく、少年少女が活躍するファンタジー小説です。出てくるキャラクターは幻想世界(ヴィジョン)に住む人間と人間以外の生物です。
主人公のワタルが現実世界で起こった家庭の問題を、なんでも願い事がかなえられるという幻想世界にいき、運命を変えるために仲間たちと冒険をする、という話です。
これだけ読むとありきたりのストーリーに感じますが、驚くのは上巻500ぺージを使って、ほとんど現実世界のワタルの身に起こる不幸な出来事を書き綴ることです。ふんだんにページを使ってワタルがどん底に落ちるさまを描きます。ここまでしっかりと運命を変える旅に出るための理由付けをしていれば、読者も納得させられてしまいます。
中巻以降は、願い事をかなえてくれる女神に会うために、幻想世界で宝玉を集める旅に出ます。
その途中、仲間を得たり、人種差別問題に遭遇してみたりと、なかなか考えさせられる話になっており、子どもが読んでも楽しいし、大人が読んでも子どの頃に戻ったような感覚と、今だからこそわかるという感覚の2側面から楽しめます。
また、ご都合主義のストーリー展開ではなく、最後も読んだ人が納得するようなすっきりとした読後感があります。「ワタル、がんばれよ!」と応援するような気分になって終わるのです。
宮部みゆきの幅の広さには以前から、うならされていますが、ここにきて、少年少女物ファンタジー小説までかけるのか、と思うとまたも驚かされてしまいました。
この本の後、子どもは学校の図書室にあった、デルトラクエストを読んでいると言っていました。こちらも字ばっかりのファンタジー小説で、人気のあるシリーズのようです。
かといって、いまだにゾロリの本も読んでいるし、以前から親しんでいる本の中に時折、こうしたちょっと字が多い物語を混ぜて読んでくれればいいかなと思うのでした。
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