すべてがFになる:森博嗣
「すべてがFになる」は、過去に両親殺害を疑われる天才科学者の殺害がどうして起こったのか、を解決していく話です。
テンポよく話が進むため非常に読みやすいと感じました。
違和感があったのは、登場人物のほとんどが死者が出ているということにそこまで感情的にならずに平然とふるまっている感じがするところや、主人公である西之園萌絵は20歳のお嬢様なのに、被害者の身内に話しかけるとみんななんの拘りもなく話をしてくれるところでしょうか。その部分はある意味ご都合主義に感じてしまうところでもありますが、おそらく登場人物はほとんどが学者でしかもエリートであるため、普通の人とは少し違う感覚をもっており、それが現れている、と考えれば納得できます。
また、この本が書かれたのは1998年でようやくインターネットが広まり始めたところ、光回線もない時代です。
それなのに未来のことを予見しているようで、作者の知識量の豊富さをうかがい知れます。
あとがきを読むと、この本は10巻までシリーズ化されており、当初「すべてがFになる」は4巻目の話になる予定だったとのことです。
500ページを超す長編ではありますが、サクサク読み進められるのでお勧めです。
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