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つけびの村:高橋ユキ

2013年に山口県周南市で発生した、山口連続放火殺人事件の真相を知るべく取材した内容をルポとしてまとめたものです。
著者は、裁判の傍聴マニアで、それが高じてルポを書くようになり、フリーライターとして活動している人のようです。

事件現場は、山口県周南市北部の山村にある金峰地区という郷集落で、高齢者ばかり8世帯12人が住む限界集落でした。
この集落で周りと交流せずに一人で暮らしていた男が犯人として逮捕されます。週刊誌などがこの事件を一斉に報じ、犯人の男が妄想性障害であること、犯行予告をしていたことなどが書かれていました。
しかし、著者は、本当にそれが真実なのか?と考え、事件の真相を探りに金峰地区に赴きます。みんな事件のことを語りたがらないかと思いきや、噂話が唯一の娯楽だった限界集落の人々は、やがて犯人の男のことや被害にあった人たちのことなどを本当なのか嘘なのかわからないながらに語り出します。果たして真相はわかるのかーという内容です。
まずこの事件の異常性に興味を惹かれるのですが、そもそもは著者がウェブのnoteというサービスでこのルポを有料で公開していたのが、検索にひっかかったのがきっかけでした。それから本も出していることを知り、それを読んでみたという流れです。
このルポ記事にはちょっと小説風というか、いらない描写があり、蛇足と感じる文章が散見されます。小説家のように書いてみたかったのだろうな、と感じます。

基本的には誰が誰について何と話したか、という人の話が主体となっているものなので、それ以外の部分はあまり面白みもなく停滞感があります。
それでもこれだけの情報を聞き出しまとめたのは苦労しただろうなと思います。また、実際に犯人とされた男とも接触して何度も話を聞きに行っており、その際に感じたことも、主観ではありますが、淡々と述べています。
自分ではここまでのことはできないだろうなという気持ちで読むと、この行動力や忍耐力には頭が下がる思いでした。

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