HOME生活感想母性:湊かなえ

母性:湊かなえ

「母性」というタイトルの映画が上映されるということを以前に知り、それ以来、原作の母性を読んでみようと思っていました。

話は、自分の母親のことが大好きで、いつまでも子供として母親にかわいがられていたいと思っている母と、その母に愛情を注いでもらいたいのにもらえず、どうすればよいか葛藤している娘という2人の回想を中心に進んでいきます。

ところが、それは母ないしは娘の目から見て感じたことを主体的に語っているため、勘違いや思い込みがちりばめられています。
母の回想と娘の回想がそれぞれ少しずつ食い違っていることから読者は気づかされていく、というつくりになっています。
このようなタイプの話は、感情移入して読もうとしてしまう私のような人にとっては、だまされやすく、途中までは実際に起こった真実として語っているものと考えていました。しかし、途中からこれはどちらか(または二人とも)が自分の都合の良いように解釈しているのだな、ということがわかってきます。
母親はこう思っていたけれど、娘はこう思っていた。
この時母親はこういう理由で行動したけれど、娘は別の理由で行動していた。
など、主に、母親は娘のことを忌み嫌っており、娘はけなげにも母親に気に入られたいと思っているのですが、すれ違ってばかりでうまくいきません。そして娘は追い詰められていきます。

途中までは思い込みの強い母親の一方的な言い分を聞かされているだけのような気がして、面白く感じませんでしたが、後半にかけて、一方の主張の後にもう一方の主張で訂正していく感じで読んでいくと面白くなり、一気に読み進めてしまいました。

関連記事

ソロモンの偽証:宮部みゆき

映画化されてもいるし、前からあるなとは思っていたけれど、3部作(文庫本だと6冊)のため長いからなかなか手を出せずにいた、ソロモンの偽証を読んでみました。 映画も見たことはないのですが、あらすじで学校内…続きを読む

震える岩 霊験お初捕物控:宮部みゆき

わたしは、いわゆる時代物と呼ばれる、江戸時代など過去の時代背景を題材にした本を割と読みます。 以前は藤沢周平ばかりを読んでおり、その世界観や必殺技などに魅せられていました。では次に誰の時代物を読もう?…続きを読む

オイアウエ漂流記:荻原浩

荻原浩の書いた「砂の城」が読みやすくて面白かったので、他の本も興味を持って読んでみたのが、オイアウエ漂流記です。 この本は、日本人+1名の外国人たちを乗せたトンガ行の飛行機が墜落して、無人島に流れ着き…続きを読む

桜ほうさら:宮部みゆき

「桜ほうさら」は上下巻からなる宮部みゆきの時代小説です。 剣の腕は大したことはないけれど、文筆には覚えのある心優しい侍が主人公、古橋笙之介です。 自分の父親が陰謀に巻き込まれたことを知らされ、架空の田…続きを読む

ダイイング・アイ:東野圭吾

交通事故を起こしてから記憶を一部失ってしまった主人公。 やがて自分が事故をしてしまった時のことを調べ始めます。 すると、謎の美女が主人公の前に現れます。 どうやらその美女は自分が事故で殺害してしまった…続きを読む

ゴジラ-1.0(映画)

ゴジラと言えば日本が誇る怪獣映画です。 多くはゴジラが現れて町を破壊するため、どうやって追い払うか、ということをテーマとして描かれるか、もう一匹別のモンスターが現れて、それをゴジラが撃退する、という話…続きを読む

すべてがFになる:森博嗣

「すべてがFになる」は、過去に両親殺害を疑われる天才科学者の殺害がどうして起こったのか、を解決していく話です。 テンポよく話が進むため非常に読みやすいと感じました。 違和感があったのは、登場人物のほと…続きを読む

さかなのこ(映画)

さかなクンの自伝「さかなクンの一魚一会~まいにち夢中な人生! 」を元に映画化したものが「さかなのこ」です。 最初、映画館の広告でこれをみたときに、おもしろそうだなと思いました。 短期間に再び映画館に行…続きを読む

ブレイブ・ストーリー上中下:宮部みゆき

小学生低学年から中学年にかけての子どもに、本を読んでほしいと願う家庭で起こる問題の一つが、「かいけつゾロリから抜け出せない問題」だそうです。 いかにゾロリが偉大であるかの裏付けでもあるこの問題、本を自…続きを読む

むらさきのスカートの女:今村夏子

「何も起こらないのに面白いとTikTokで話題沸騰!」という帯に惹かれ、あらすじをチェックすると、主人公がいつも近所でみかける「むらさきのスカートの女」と友達になりたいが故に、自分の職場に就職するよう…続きを読む