死刑にいたる病:櫛木理宇
前に、「死刑にいたる病」という映画が公開されるというCM(現在は既に公開は終わっています)を見たので、原作本を読んでみました。
死刑判決を受けた連続殺人犯が、一件だけ自分の罪ではない、ということで、それを調べてほしいと、うだつの上がらない大学生である主人公に獄中から依頼する、という話です。
主人公の大学生は何をやってもうまくいかないことで腐っており、心の底で社会を憎んでいます。
最初は、連続殺人犯の依頼を断るつもりでいたものの、やがてその依頼を受ける気になり、犯人とかかわった人たちへのインタビューなどを通して、その一件の犯罪を調べていきます。
殺人犯の生い立ちは悲惨なもので、だからこそ殺人という狂気に走るのだというのが定説で、この本の根底にもそれが流れているのが分かります。
調査やインタビューを通して、かつて優等生で堂々としていた自分を取り戻していく主人公、調べていくと徐々に解明されていく殺人犯と自分との接点…そして、という話です。
話自体はどっちなんだろう?と思いながら読み進める内容で、最後もただでは終わらない感じになっています。
わたしが気になったのは、主人公の大学を「Fラン大学」と表現しているところと、ある人物の「額が後退した」という表現をしているところでした。
Fラン大学とは、Fランク(=低ランク)の大学という意味のネットスラングですが、それを何の説明もなく使ってしまうのは、違和感がありました。
そして、「額が後退する」という表現は誤りではないかと思います。正確には「生え際が後退する」です。
後退する=後ろに下がる、ということは、何か最前線があって、そこが後ろに移動するという意味です。
つまり、ラインが下がっていることを意味しています。
対して、「額」というのは、「ここからここまであるよ」というエリアになります。
エリアには、始まりのラインと終わりのラインがあります。
この終わりのラインが後ろに移動しただけでは、エリア自体は後ろに下がっているわけではなく、広がっていることになります。
エリアが「後退する」場合には、始まりのラインが後ろに下がらなくてはいけません。
ところが、額の場合には、始まりのラインは後ろに下がることはありません。常に終わりのライン(=生え際)だけが後ろに下がっていきます。
したがって、額が後退することはなく、額は広がっていくものと表現するべきではないかということです。
こんなに熱く、生え際の後退について書くつもりはなかったのですが、小説を読んでいるとこういう言葉遣い一つに目が行ってしまい、記憶に残ってしまうというのが不思議です。
ところで、映画では阿部サダヲがこの連続殺人犯を演じています。
原作の連続殺人犯は、さわやかイケメン風に表現されています。
なんだかギャップがあるなぁと思いました。イケメン要素は無視して、不気味さといいひと要素の対比を強くしたのでしょうか。
関連記事
ブレイブ・ストーリー上中下:宮部みゆき
小学生低学年から中学年にかけての子どもに、本を読んでほしいと願う家庭で起こる問題の一つが、「かいけつゾロリから抜け出せない問題」だそうです。 いかにゾロリが偉大であるかの裏付けでもあるこの問題、本を自…続きを読む
半落ち:横山秀夫
横山秀夫という作家の本はこれで2冊目です。 ここまで読んだ感想としては、この人の本はとても読みやすいということです。 一番最初にナゾとされている問題提起があり、そのオチに向かって突き進んでいくスタイル…続きを読む
青の炎:貴志祐介
「青の炎」はミステリー小説ですが、その中でも「倒叙ミステリー」と呼ばれるジャンルのミステリー小説です。 主人公は高校生の櫛森秀一。 彼は高校生活を楽しむ普通の学生でしたが、あるとき急に家に離婚した元父…続きを読む
ゴーストブック おばけずかん(映画)
映画館で本編を見る前にやっている予告編を見ているときに、このゴーストブックが流れ、実写であることで面白そうだなと思い、子供に薦めて見に行ってみました。 出演に新垣結衣が出ているところも売りなのでしょう…続きを読む
さまよう刃:東野圭吾
東野圭吾はガリレオシリーズや新参者シリーズなど、テレビや映画化もされた人気作品を多くもつ、言わずと知れた超有名作家なので、もうテレビで見たことあるし、後回しでよいか、などと勝手に思っていて読んでいなか…続きを読む
深い河:遠藤周作
しばらくミステリー物ばかり読んでいたので、別のジャンルを読もうということになり、たまたまネットで紹介されていた旅物を読むことにしました。 そのうちの一冊として紹介されていたのが、「深い河」でした。 遠…続きを読む
あんじゅう―三島屋変調百物語事続:宮部みゆき
「あんじゅう―三島屋変調百物語事続」は、三島屋変調百物語シリーズの第2巻です。 主人公おちかが、この世ならざるものの仕業と思われる体験をした人たちから、その不可思議な話を聞く、というストーリーです。 …続きを読む
刑事の子:宮部みゆき
父親が刑事である、八木沢順が、近所に住んでいる怪しげな館にいる老人が人殺しであるという噂を耳にします。 ほどなくして本物の死体の一部が発見され、犯人と思しきものから手紙が届いたことから、事件をみすごせ…続きを読む
パレートの誤算:柚月裕子
「パレートの誤算」は、NHKのドラマ化もされたということなのできっと面白いのだろうと思い読んでみました。 パレートとは、「パレートの法則」を考えたイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートの名前です。 …続きを読む
野生のロボット:ピーター・ブラウン
野生のロボットは、子供向けの本です。 うちの子に読ませたら読むのではないか?と考えて手に取りました。 うちの子は、なかなか本を積極的に読まず、漫画やゾロリなど読みやすいものばかりを読んでしまいます。も…続きを読む