オイアウエ漂流記:荻原浩
荻原浩の書いた「砂の城」が読みやすくて面白かったので、他の本も興味を持って読んでみたのが、オイアウエ漂流記です。
この本は、日本人+1名の外国人たちを乗せたトンガ行の飛行機が墜落して、無人島に流れ着き、そこでどうにか生き抜いていく、という話です。
その話が終始コメディタッチで描かれていきます。
この飛行機に乗り合わせたのが、サラリーマン5人、おじいちゃんと孫、新婚夫婦、謎の多い外国人、機長と犬の10人+1匹。
サラリーマンはとてもブラックな会社で部長がパワハラし放題、おじいちゃんはボケかけていて時々ガダルカナルの戦場と間違えるし、新婚夫婦の新妻は既に結婚を悲観していて成田離婚を模索、そして犬を副操縦席に座らせた機長…といった面々が、島に漂着してからも、心を入れ替えるどころかみんなマイペース。
それが様々な困難に立ち向かいながら食料を手に入れ、寝床を確保し、火をおこす…といった生活力を徐々に身に着けていきます。
はたして彼らは無事に島を脱出できるのか?それともここで一生暮らしていくことになるのか?
普通の人ならそんなことにはならないだろうな、という感覚で読んでいると、あまりにも自分勝手な人たちばかりで腹立たしくも笑えてきてしまう、そんなめちゃくちゃな人たちが、ある場面ではすごく役に立つ知識を持っていて、これだから人は侮れないと思ってしまいます。現実世界でも、何か一つに長けている人はよくいるもの。だから、簡単に人を馬鹿にしてはいけないな、と思います。
そして、サバイバル系の知識は、おそらくかなり本格的な物なのだろうと思います。この知識は著者もよく調べたのか元々知っていたのかはわかりませんが、単なるコメディで終わらないものを感じます。
全編通して、なんだかNHKの夜のドラマになりそうな話でした。サスペンスではなく、コメディ。こういう本は読んでいて楽しいので、600ページを超える長編ですが、結構スラスラと読み進めてしまいました。
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