55歳からのハローライフ:村上龍
サスペンス続きだったので、別の話を、と思い手に取ったのが「55歳からのハローライフ」です。
定年を前に仕事を辞めた人、仕事をなくした人たちの、これからどうしようか、という困惑とそこから前向きになる過程を描いた5話オムニバス形式の小説です。
1話1話、謎があるわけでもなんでもないのですが、とても読みやすいし、次が気になってページを進めてしまう魅力があります。オムニバスとして1話が短いこともテンポよくストーリーが進む理由でしょう。
熟年離婚した女性、落ちぶれた旧友、離職後に日本一周の旅を夢見る男性、犬を飼い仲間と公園で交流する女性、トラック運転手だった男性、などありそうな主人公がとりあげられ、それぞれが50を過ぎて、それまでの生活が変わってしまい、ある出来事を通して人生をもう一度見つめなおす機会を得る、というものです。
涙を流すほどの感動というものはないかもしれませんが、読後感は悪くありません。
人生を再生する過程よりも前に、こういう問題に直面した時にどうすればよいか、そうならないためにどうしておくべきか、などを考えさせられました。自分がまだ若ければ感じなかったかもしれませんが、それでも仕事をするようになると、今も大事だけど、今後20年後、40年後も生活していくためにどうするのがよいだろうか、ということに思いをはせるきっかけになりそうな本です。
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